四囲(しんい)のものは、四方を密閉すべからず
四方を筆画で囲む字(「国」「園」など)は、四方をきつく閉じすぎて、息が詰まったように書いてはならない。
~剛健なる骨格、厳格な法理が生む究極の均衡美~
四方を筆画で囲む字(「国」「園」など)は、四方をきつく閉じすぎて、息が詰まったように書いてはならない。
上から下を包む字(「宇」「宙」など)は、内部の筆画を少し上の方へ引き締めて書く。
下から上を包む字(「画」「凸」など)は、内部の筆画を上の方へ高く出す。
左から右を包む字(「句」「匡」など)は、内部の筆画を右側へ突き出さないようにする。
左上が囲まれている字(「庁」「房」など)は、内部の横画を長く書きすぎない。
左下が囲まれている字(「建」「延」など)は、内部の筆画を上の方へ勢いよく立てる。
右上が囲まれている字は、字形に応じて内部の筆画を伸ばしたり縮めたりして調整する。
「うかんむり」などの上部を覆う構造がある字(「宝」「安」など)は、下のすべての筆画をその冠の下に収める。
「しんにょう」や「さらあし」などの下で支える構造がある字(「遠」「盤」など)は、上のすべての筆画をその構造の上に載せる。
左側にスペースを譲る場合、左側のパーツを少し高く(昂らせ)、右側を少し低く配置する。
右側にスペースを譲る場合、右側を大きく伸ばし、左側をコンパクトに縮める。
長い横画が中心となる字(「士」「天」など)は、その横画を長く強調して書く。
中心の長い縦画が主軸となる字(「中」「木」など)は、縦画を真っ直ぐ正しく書く。
左右に同じようなパーツがある字は、左右の筆画と空間を均等に配置する。
左側が主役であったり比重が大きい字は、左を多少大きく書いてもよい。
右側が主役であったり比重が大きい字は、右をどっしりと豊かに書いてもよい。
上部が主な空間を占める字は、上部を広く取る。
下部が主な空間を占める字は、下部を広く取る。
左右両方が大きく場所を取る字は、中央のパーツを控えめに、収縮させて書く。
中央部分が主役の字(「州」「泰」など)は、中央を雄大に、ゆったりと書く。
「戈(か)」などの長い斜めの跳ね(斜鉤)は、曲がりすぎたり短くなったりしてはならない。
しなやかさが必要な跳ねや筆勢は、あまりに真っ直ぐ、あるいは硬く長く書きすぎてはならない。
横画が短く縦画が長い字は、左払いと右払いをゆったりと伸ばす。
横画が長く縦画が短い字は、左払いと右払いを控えめに縮める。
横画が短く左払いが長い字は、横画は思い切り短く、左払いは思い切り長く書く。
横画が長く左払いが短い字は、横画は思い切り長く、左払いは思い切り短く書く。
上下に横画が重なる場合、上を短く、下を長くして安定させる。
左右に縦画が並ぶ場合、左を短めに控え、右を長めに伸ばす。
同じ方向に横画が重なる字は、長さや高さに変化をつけ、単調(板状)になるのを防ぐ。
縦画が並ぶ場合、竹の節のようにそれぞれに変化をつけ、生き生きとさせる。
点が複数ある字は、それぞれの点の向きや角度(偃仰向背)を変えて変化をつける。
三つのパーツが組み合わさる字(「衡」など)は、中央のパーツを必ず真っ直ぐ正しく書く。
上下二段の字は、上下の空間をほぼ半分にするが、繋ぎ目に変化をつける。
三つの部分が連なる字(「春」「泰」など)は、上下の伸びと中央の詰まり具合を均等に整える。
左の偏(へん)が小さい字は、右のパーツの上端と揃える。
右のパーツが小さい字は、左の偏の下端と揃える。
同じパーツが並ぶ場合、外側の筆画を伸ばし、内側(接する側)の筆画は縮めて譲り合う。
上下に重なる字(「昌」「品」など)は、中央の重なりをすっきりと整理し、単調にならないよう変化をつける。
四つの同じパーツが重なる字は、対称性を保ちながら、バラバラにならないよう適切に配置する。
四角い字(「口」「日」など)は、上の両角(肩)と下の両角(脚)を平らに揃える。
垂直な筆画は傾けてはならない。傾くと品格を失う。
斜めの勢いがある筆画は平らに書いてはならない。平らになると勢いを失う。
左が払いで右が縦画の字(「伊」など)は、左の払いを短くし、右の縦画を真っ直ぐ下ろす。
左が縦画で右が払いの字(「仁」など)は、左の縦画を引き締め、右の払いをゆったりと書く。
一つの字に右払いが複数ある場合、一つを伸ばしたら他を縮めるなど、変化をつける。
長い右払い(「之」など)は、起筆をタイトにし、終わりを力強く収める。
長い「戈」の筆画は、筆力が弱かったり、体が曲がりすぎたりするのを最も忌む。
横方向の「戈」(「武」の下部など)は、多少のカーブがあってもよい。
大きく伸ばす跳ねは、内部を包み込むような抱持の勢いが大切である。
上からの筆画を受ける「乂」の形(「父」など)は、ちょうど中心に配置することを尊ぶ。
曲がった跳ね(「子」など)は、少し控えめに、内側に収めるのがよい。
「馬」の跳ねの先は、下の四点の中央(半分)あたりを指すように書く。
上下に跳ねがある字は、下の跳ねをはっきりと書き、上の跳ねは控えめに(または止めるように)隠す。
下向きと上向きの跳ねがある場合、下向きを短く、上向きを長く伸ばす。
縦画や横画が重複する場合、状況に応じて「跳ね(挑)」を使うか、あるいは「止め(駐:筆を止めて収める)」を使うかして、変化をつけなければならない。
上端が平らな字(「三」「王」など)は、筆画の頭を揃える。
下端が平らな字(「土」など)は、筆画の足を揃える。
重複する転折(筆の曲がり角)は、しなやかな曲線を描きつつ、力強く強靭に書くべきである。(ここでの「腕」とは、筆画の転折、特に力感のある曲がり角の部分を指す。)
横方向の転折(曲がり角)や筆画の繋ぎ目は、角張らずに円やか(まろやか)で、潤いのある滑らかな筆致で書くことが肝要である。(ここでの「腕」とは、横方向の転折や接続部分を指す。)
長い縦払いの先が、ネズミの尻尾のように細く弱々しくなるのを嫌う。
払いが連続する場合(「参」など)、歯並びのように等間隔で単調になるのを避ける。
三つの払いがある場合、一番下の払いの起筆を、真ん中の払いの腹(中央)に向ける。
複数の点は、互いに視線を交わすように呼応させ、形や大きさに変化をつける。囲碁の碁石のように同じ形を並べてはならない。
三つの点を持つ字(「氵(さんずい)」や「心」など)において、一番下の点の跳ね上げる筆先(提鋒)は、一つ前の点の書き終わり(駐筆・収筆)と、互いに気脈を通わせ、呼応していなければならない。
連続して並ぶ点(「灬(れっか)」など)を書く際は、一画一画の形や方向、大きさに変化をつけることが肝要であり、碁石のようにすべてが同じ形や大きさになってはならない。
筆画が離れていても、内面的な気勢や筆意は繋がっているように書く。
文字を中央で左右に分けるような構成(「門」や「非」など)の場合、分割された左右のパーツや縦画は、あたかも一本の芯が通っているかのように、真っ直ぐ垂直を保たなければならない。
「卜」の縦画は傾けず、上のパーツの中央に合わせる。
「土」の縦は傾けず、下の構造の左の縦画と正対させる。
画数が多い字は、精巧に配置し、重苦しく混ざり合わないようにする。
画数が少ない字は、一筆をどっしりと太く書く。
筆画が入り組んだ字は、互いに避けたり差し込んだりする工夫を尊び、無秩序になるのを避ける。
筆画を並べる際(特に「三」や「目」のように平行する線が重なる場合)は、熟練の職人が器物を精巧に彫り上げる(彫刻する)ように、緻密で均整の取れた配置がなされてこそ、優れた書となる。
本来、針を懸けたように鋭く抜くべき「懸針」の縦画を、露が垂れるように丸く止める「垂露」で書いてしまうと、その文字の持つ気品や余韻(趣)が失われてしまう。
本来、露が垂れるように力強く止めるべき「垂露」の縦画を、針のように鋭く抜く「懸針」で書いてしまうと、文字の重心が浮き上がり、底力が感じられない(弱々しい)ものになってしまう。
「戈(か)」のように、文字全体の構え(外形)が右上がりや斜めの勢いを持つ字であっても、文字の重心(字心・中心)は真っ直ぐ端正に保たなければならない。
「正」や「田」のように、もともとの字形が真っ直ぐで四角い字は、ともすれば単調になりやすい。そのため、内部に秘められた筆力(骨力)を強く、強靭に表現しなければならない。
「月」や「身」のように、もともと筆画が細身で縦に長い字は、その特徴を活かすべきであり、形を短く(扁平に)書いてはならない。
「四」や「口」のように、もともと筆画が太くどっしりした字は、ゆったりと書くべきだが、だらしなく太らせて(腫れたように)書いてはならない。
「土」や「山」のように、もともと背が低く小さい字は、線が細いと存在感がなくなる。そのため、用筆を太めに(豊かに)して、安定感を持たせるのがよい。
もともと文字のサイズ自体が小さい字(画数の少ない字など)は、内部の余白や筆画の密度を均等に整えることで、小さくても品格を保つことができる。
「うかんむり(宀)」などの下で支える構造(蓋下の法)を持つ字(「宝」「安」など)では、その下の左払い(撇)と右払い(捺)を、左右均等にバランスよく配置しなければならない。
文字の下部の筆画や構造が持つ勢いや安定感を利用する際は、それに合わせて左右のパーツが釣り合うように(相称になるように)配置すべきである。
左右のパーツから成る字(偏と旁など)は、互いに中央に向かって向き合うような気配を持ち、ぶつかり合わないように互いに場所を譲り合う(肩を並べつつ譲り合う)ことが大切である。
左右のパーツが背中合わせの字(「北」など)でも、お互いに気配を感じ合う(顧盼)ように書く。
筆画の間隔が広くゆったりとした字(画数の少ない字など)は、それぞれの間隔(余白)の距離が均等になるように配置し、バランスを整えるのがよい。
筆画の間隔が狭く密集している字(画数の多い字など)は、点や線がぶつからないよう、それぞれの位置を細かく調整し、整然と並べるべきである。
「安」や「女」のように、横画(画)が長く、左払い(撇)が短い字では、右側に大きな右払い(捺)を使うと形が崩れやすい。このような場合は、右払いを「点」に止めるなどしてバランスを取るのがよい。
「うかんむり(宝蓋)」の左向きの鉤(「写」「宅」などの最後の跳ね)は、鳥が自分の胸を覗き込むような、内側に抱え込むカーブを持たせて書くのが最も精妙で美しい。
文字の最後にある鉤(はね)は、ほんの少し引きずるように(長く)書くとよい。そうすることで、次の文字や下の空間へと繋がっていくような「気脈」の勢いが生まれる。
「節(卩)」を部首に持つ字(「印」「即」など)の右側の縦画は、左側のパーツの「上端(首)」の高さに合わせるか、あるいは左側のパーツの「中央(腹)」の高さに合わせて、全体の均衡を取るべきである。
「おおざと(邑・阝)」を右側に持つ字(「都」「郭」など)は、この部首をゆったりと大きく、のびのびと(展じて)書くことで、字全体が堂々とした構えになる。
「こざとへん(左の阝・阜)」を持つ字(「陵」「陰」など)は、この部首を細身に書き、右側のパーツに十分な空間を空けて場所を譲るべきである。
「木」または「きへん」を書く際は、左払い(撇)をゆったりと伸ばし、右側の払い(捺)は短く止める(または「点」にする)ことで、右側のパーツとの衝突を避けるのがよい。
「りっしんべん」を書く際は、左の点を垂直に振り下ろす「垂点」とし、右の点を横向き、あるいは斜めの点とする。中央の縦画を挟んで、左右の点が互いに向き合うように書く。
「豕(いのこ)」やこれを含む字(「象」など)は、中央の長い鉤(はね)をゆったりと曲げ、内部を包み込むような「抱持」の勢いを大切にする。対して、右側の折れや払いは控えめに引き締めて(縮斂)書くべきである。
「にんべん(単人)」を書く際は、縦画(直)の書き始めを、左払い(撇)のちょうど中央(腹)あたりに合わせる。
「ぎょうにんべん(双人)」を書く際は、二画目の払いを一画目の払いの腹から書き始め、三画目の縦画を二画目の払いの腹から書き始める。
「豎弯鉤(じゅわんこう)」、いわゆる「子」や「了」などにある縦から曲がって跳ねる筆画は、曲がる前の縦(直)の部分を長めにとるのがよい。(※字形により調整が必要だが、縦の勢いを重視する教えである。)
「くさかんむり(艹)」を書く際は、横画を左右対称のバランスで書き、二つの短い縦画は、左を「払い(撇)」、右を「点または止め(捺)」のような形にして、左右で呼応させるのがよい。