右方点(うほうてん)
筆を入れる際、穂先と紙面の角度を特定に保ち、筆幅を維持しながら指定の方向へ進め、最後は力を溜めて止める(頓筆)。始筆部が四角形や鈍角になるのが特徴。落筆時の「方正感(四角い力強さ)」と運筆時の「力量感」を強調し、柳体における多くの筆画の基礎となる重要な要素である。
~鉄骨の如き強靭なる筆跡、柳体楷書を成す点画の精義~
筆を入れる際、穂先と紙面の角度を特定に保ち、筆幅を維持しながら指定の方向へ進め、最後は力を溜めて止める(頓筆)。始筆部が四角形や鈍角になるのが特徴。落筆時の「方正感(四角い力強さ)」と運筆時の「力量感」を強調し、柳体における多くの筆画の基礎となる重要な要素である。
主に字頭、偏(へん)、または構造の左側に用いられる。その妙味は、字形を飾るだけでなく、他の筆画と呼応し合い、柳体特有の厳格な法度と清勁(せいけい:清らかで力強い)なスタイルを構築する点にある。
重心の強調や、字形の右側のバランスを保つ筆画として多用される。その丸み(円潤)は左方点の鋭さ(方勁)と対照をなし、柳体楷書の点画における芸術的表現力を豊かにしている。
字形の左下部分の装飾やバランス調整に用いられる。柳体の他の筆画に見られる鋭さや突き抜けるような勢いと対比を成すことで、点画の種類を広げ、字形に「筋骨(骨組み)」と「血肉(豊かさ)」の両方を与えている。
「撇(左払い)」の流動性と「点」の凝縮された性質を巧みに組み合わせたもの。柳体楷書の厳格かつ変化に富んだ特徴を示し、字の構造に躍動感と力を添える。
短い筆画ながら、起筆・行筆・収筆のすべてに柳体特有の「方硬(角張った硬さ)」「含蓄(控えめな奥深さ)」「沈着な収束」が体現されている。柳体において極めて代表的な筆法要素である。
構造の左側に多く見られ、動きを与えるだけでなく、柳体特有の「険峻(けわしさ)」と「清奇(気高く珍しい)な骨格」を表現する重要要素。起筆の鋭さと収筆の落ち着きの対比が、柳公権の「外拓内斂(がいたくないれん:外に広がりつつ内を締める)」という芸術様式を示している。
起筆の控えめな丸みと、収筆の鋭い跳ね上げを組み合わせたもの。「内斂にして外拓」という柳体の美学を体現している。丸みを帯びた起筆で力を蓄え、精気あふれる収筆で跳ねることで、安定感の中に変化と生動感を生み出す。
沈着な起筆、豊かな行筆、そして鋭い跳ね出しにより、柳体書法の「剛勁(ごうけい:剛く強い)」「骨肉匀停(こつにくうんてい:骨と肉のバランスが良い)」「険峻多変」なスタイルを表現する。字を支えるだけでなく、全体の勢いを高める鍵となる筆画である。
主に字の頂部に用いられる。短い筆画ながら字の骨格を成す重要要素であり、角張った起筆、重厚な行筆、控えめな収筆を通じて、柳体の剛毅かつ張りのある芸術様式を示す。細部まで生命力が溢れる処理である。
字の右下に多用される。小さな点ながら生命力と張りに満ちており、柳体の「剛健・清痩(せいそう)」の中に「豊潤さ」を失わない重要な筆法である。
角張った起筆、険しい転折(角)、そして落ち着いた縦の点により、柳体の骨格の清々しさと稜角(角立ち)の鮮やかさを表現する。短く精悍でありながら、筆画間の繋がりと力の伝達を強調している。
「点」と呼ばれながらも、形態は短い「撇(左払い)」や「捺(右払い)」に近く、柳体特有の識別性が高い筆法。細部にまで力強さと精気が宿り、字形に独特の風格を与える。
単なる点ではなく、凝縮された「短い横画」である。起筆の鋭さ、行筆の安定、収筆の重厚さを通じて、柳体の剛毅さと厳格な構造美を表現している。
二つの点はそれぞれ独立しているが、構造上は互いに呼応し合い、字頭に力強さとバランスをもたらしている。
古典的で表現力豊かな組み合わせで、「頭部二点(呼応)」または「左右対称点」と呼ばれる。二つの点は形態において呼応し合い、字頭の安定感と霊動感(生き生きとした動き)を構成する。
柳体において古典的かつ構造美に優れた組み合わせで、「底部八字」または「撇捺(へつなつ)組合せ」と呼ばれる。底部で大きく開いた安定した構造を作り、柳体特有の力強さと均衡を体現している。
二つの筆画が内側に向かって収束し、緊張感のある力強い構造を作る。これは柳体における「中宮(中心部)の引き締め」と、険峻かつ凝縮された結字の現れである。
二つの点が左右に分かれて配置され、独立性を保ちながらも呼応し合い、字形を支えている。
柳体の「左側二点」は「骨力」を強調する。筆画は勁挺(けいてい:強くまっすぐ)で、肥大せず軽薄でもない。これは柳公権の「心正ければ筆正し」という審美的な追求を体現している。方筆(角張った筆使い)による起筆と収筆が多く、清潔感があり、剛健で挺抜な印象を与える。
字の中での配置により、字形を支え、均衡を保つ役割を果たす。文字全体の安定構造を成す重要な要素であり、重心をどっしりと落ち着かせる。
三点の間の空間関係、傾斜角度、そして三点目の筆使いの変化に注意し、全体の安定と調和を維持する。
変化に富み、表現豊かな筆画群である。固定された形態ではなく、字形や筆勢の必要に応じて変化する。
碑帖にある三点の微妙な形態の違いを細かく観察し、大きさ、角度、出鋒(抜き)の方向の変化を模倣する。練習時は果断に筆を運び、筆画が軟弱になったり墨だまりができたりするのを避け、柳体特有の「痩硬(そうこう)」な質感を追求する。
練習時は、三点の間の目に見えない筆勢の繋がり(筆断意連)を意識し、組み合わせ全体に生命力を吹き込む。意図的な提筆・按筆(筆を上げ下げする操作)と頓挫により、各点に豊かな立体感と力強さを与え、平板で軟弱になるのを防ぐ。
三点全体の傾斜角度に特に注意し、平坦すぎたり傾きすぎたりせず、自然に右上がりの勢いを保つ。書作中は常に沈着かつ果断な筆力を維持し、骨力を外に現し、墨だまりを防ぐ。
三点の垂直方向の整列と等間隔の配置に重点を置き、偏(へん)と旁(つくり)としての端正さと重厚さを確保する。字全体の構造の中に配置し、左側や他の筆画との調和を考慮する。
筆画の挺抜さと力強さを保ちつつ、全体の対称性と調和を重視する。起筆の頓挫、送筆の流暢さ、収筆の回鋒に注意し、各点が独立しつつ呼応するように書く。筆力のコントロールと構造の均衡をマスターし、骨力と霊動感を両立させる。
左から右へと順に展開し、各点の起筆は力強く、送筆は流暢に、収筆は含蓄(控えめ)に。独立性を保ちながらも互いに呼応させる。リズム感と筆勢の切り替えを把握し、柳体の厳格かつ活発な特徴を表現する。
起筆の頓挫と沈着さに特に注意する。送筆中にわずかに筆を浮かせ、中段が上に弓なりになった「凹」状にする(平坦や右下がりは避ける)。収筆は回鋒または頓筆で潔く収め、短く精悍ながら内に勁力を秘めた構造にする。
安定して入鋒し、中段は平直かつ重厚に、均一な筆力を保つ。曲がりや震えを避ける。収筆は提筆または回鋒で、果断かつ力強く。短く精悍な筆画で、字の構造を堅実に支える。
沈着かつ飽満(ほうまん)に起筆し、左端を太く力強くする。送筆中に徐々に筆を上げ、右端に向かって細くしていき、軽やかに収める。筆力を重から軽へと滑らかに変化させ、柳体の霊妙な変化と層の豊かさを表現する。
軽巧かつ弾力的に起筆し、左端を細く。送筆中に徐々に筆を押し下げ、右端に向かって太くしていき、飽満に収める。軽から重への筆力変化により、リズム感のある構造を作る。
方折(角張った入り)または蔵鋒で起筆し、左端を沈着に。中段は平穏かつわずかに右上がりの勢いで。収筆は右上方へ素早く筆を離し、清勁(せいけい)な尖角を作る。一気呵成に書き、短くとも衝撃力のある筆画にする。
左側から鋭く、かつ内斂(ないれん)に入紙し、紙を切り裂くような尖鋒を作る。中段は平穏に、重厚感と力量を保つ。収筆は頓筆または回鋒で潔く。左の鋭さと右の厚みの対比を強調する。
沈着かつ有力に起筆し、筆鋒を広げるが、常に筆先が筆画の中央を通る(中鋒)ようにし、中段を太く飽満にする。力貫始终(最後まで力を貫く)を旨とし、太くても臃腫(ようしゅ:ぶよぶよした太さ)にならず、雄渾かつ弾力的な柳体の特徴を示す。
側鋒(筆を傾けた状態)で入紙し、素早く筆を広げて左端を飽満にする。送筆中も平たく筆を使い、中段を太く安定させる。収筆は頓筆や回鋒、あるいは方折(角)を使い、力強く収束させる。雄渾で大らかな柳体の美を示す。
蔵鋒または軽い頓筆で入り、安定した中鋒で均一かつ勁挺(けいてい)な細い線を引く。細くとも弱くならず、勁(つよ)くとも硬直せず、柳体の「痩硬(そうこう)」の美を表現する。
側鋒で軽く入り、筆画の左端を軽快かつ力強く。細いながらも側鋒によるエッジ(骨感)を際立たせ、鋭さと勁道(けいどう)を強調する。柳体の「痩硬勁骨(そうこうけいこつ)」のスタイルを体現する。
沈着に起筆し、中鋒を保ちながら等速で送筆する。粗細を均一にし、筆力を最後まで貫く。「千里陣雲(千里にたなびく雲)」のような勢いを持たせ、端正かつ大らかな骨力を示す。
沈着に起筆し、頂部を堅実にする。中鋒を保ち、適度な太さで垂直に下ろす。収筆は軽く頓挫してから引き上げ、末端を露の滴のように丸く飽満にする。短くも堅実な質感を持たせる。
蔵鋒で、方中に円を含ませるように沈着に起筆する。中鋒で垂直に、均一な力で下ろす。収筆は徐々に筆を上げ、自然に筆先をまとめ、鋭く弾力のある針のような形状(懸針)にする。一気呵成の筆勢が重要。
反切(反対側から切り込むような入り)で起筆し、有力な稜角(かど)を作る。垂直に下ろし、収筆は懸針にせず、左下または右下へ素早く戻すようにして切角を作る。剛勁かつ内斂な美しさを出す。
上方から直接叩きつけるように切り込んで(正切)起筆し、方正な角を作る。中鋒で垂直に、均一な速度で下ろす。収筆は軽く頓筆した後、上方または左方へ素早く回鋒し、末端を尖らせず鈍角の切面にする。沈着で堅実な印象を与える。
正切で入り、中鋒に転じて下行する。方硬な頭部を作り、挺抜(ていばつ)かつ修長な直線を引く。収筆は徐々に筆を上げ、鋭く挺抜な「針の先」を作る。力道が重から軽へと自然に移行し、気勢が貫通するように書く。
正切から中鋒へ、方折のある力強い起筆から始める。垂直に、飽満かつ弾力のある線を引く。収筆は軽く頓挫して戻し、飽満な「垂露」状にする。骨力と重厚さを兼ね備えた長豎にする。
方硬な起筆から始め、挺抜に下ろす。最大の特徴は収筆で、末端で左下へ軽く頓挫し、素早く引き上げる。この結果、左下に突き出した切角(ハイヒールの踵のような形)ができ、安定感の中に変化を生む。
方正な起筆から挺抜に下ろす。収筆時に右下へわずかに頓挫し、そのまま右上または右側へ軽く引き戻すか跳ね出すようにし、わずかな「右への曲がり」を作る。硬直を避け、生動感を与える。
挺抜な筆致を保ちつつ、全体としてかすかに左へ弓なりに湾曲させる。硬直した直線ではなく、優雅な弧を描くことで動勢と含蓄をもたらす。
側鋒で入り、力強い頭部を作る。全体として滑らかに右へ湾曲させ、挺抜さの中に霊動感(しなやかさ)を含ませる。字形に変化を与える重要な技法。
起筆で一方に曲げ、中段は勁直(けいちょく)に、収筆で反対方向にわずかに曲げる。全体として「S字」のような微かな弧を描く。骨力が貫通しながらも、リズム感のある生動な縦画にする。
正切で入り、素早く左へ押し出すように出鋒する。直線的で勁挺(けいてい)な線を保ち、震えや曲がりを避ける。鋭く速度感のある撇尖(はらいの先)を作る。
逆鋒(ぎゃくほう)で入り、右上方へ切り込んで飽満な頭部を作る。明確な角度で左下方へ斜めに、勁直に押し出す。峻峭(しゅんしょう)で剛勁な骨力を示す。
逆鋒で入り、非常に方正(四角い)で稜角の明快な頭部を作る。左下方へ力強く押し出し、末端は鋭く。方頭の剛強さと撇尖の鋭さの対比を強調する。
方折の起筆から、剣を振るうように迅速かつ果断に左下方へ。極めて鋭く、鋭利な「剣気」を感じさせる出鋒にする。潔く、凌厲(りょうれい:激しく鋭い)な気勢を表現する。
右上方で頓筆してから左下へ折るように入り、刀の背のような方折を作る。勁直な行筆の後、鋭く出鋒する。刀の刃のような鋭さと沈着さを兼ね備える。
滑らかな弧を描きながら左下方へ。重から軽へ、あるいは粗から細へと変化させ、霊動的で弾力のある特徴を出す。
方正な頭部と、滑らかな湾曲を組み合わせる。柳体の骨力と霊動感の完璧なバランスを表現する。
湾曲しながら下ろし、最後に出鋒せず、軽く頓筆してから左下または下方へ短く力強く跳ねる(鉤)。独特の収束美がある。
軽やかに起筆し、徐々に力を加えながら弧を描く。最後は筆を上に戻すようにして収め、挺抜かつ弾力的な視覚効果を出す。
逆鋒で入り、直線的に左下方へ。筆力を貫き、硬直を避けつつ勁竹(けいちく)のような潔いはらいを作る。
最初は垂直に下ろし(豎)、後半で左下へとはらう。縦画の安定感と撇の躍動感を兼ね備える。
最初は垂直、後半で大きく滑らかに左へ湾曲させる。骨力の中に柔和な美しさを内包させる。
蘭の葉のように、中間を太く飽満にし、両端を細く。しなやかで弾力があり、生命力あふれる表現にする。
軽めに起筆し、右下方へ徐々に力を加えながら太くする。末端で頓筆してから右上方へはね出し、柳体特有の「燕尾(えんび)」を作る。
起筆で一旦上へ上げ、右下へ転じることで円弧状の「曲がった頭部」を作る。含蓄のある開始から、燕尾の舒展(じょてん:のびやかさ)へと繋げる。
燕尾を作らず、末端で筆を押しとどめる。方円を兼ね備えた収筆で、沈着で重厚、内に力を秘めた古朴な美しさを出す。
捺の形をした短い点。右下方へ短く力強く。末端で素早く按圧して収める。精悍で内力の強い筆画。
り水平に近い角度で、広く舒展させる。鴻雁(こうがん)が翼を広げたような、開闊(かいかつ)な気勢を出す。
逆鋒から頓挫し、右上方へ迅速に跳ね上げる。鋭く力強い、向上する衝撃力を表現する。
垂直に下ろし、末端で頓挫した後、左上方へ鋭く跳ねる。鋼鉄のような強靭さと、角度の明快さが重要。
垂直に下ろし、末端から右上方へ跳ね上げる。向上する張力を持たせる。
垂直から右下へ円滑に曲がり(弯)、最後は左上方へ跳ねる。骨力、円潤さ、勁道の三要素を兼ね備える。
平穏な横画から、末端で頓挫して斜め下へ鋭く跳ねる。構造を支える安定感と鋭さを出す。
横画、鋭い方折の転折、垂直な縦画、そして鋭い鉤。建築的な構造美と柳体の骨力を体現する。
横画、方折、円滑な湾曲、そして勁健な鉤。剛柔併せ持つ柳体の極致。
横画、方折、そして左下へ斜めに挺抜に下ろし、最後は跳ねる。険絶(けんぜつ)な勢いと支撑(しせい:支え)を表現する。
弓を引くように力を溜めながら右下へ弧を描き、最後は右上方へ鋭く跳ねる。弾力性に満ちた表現。
逆鋒で入り、中鋒で力強く右下へ弧を描き、最後は力強く上へ跳ねる。挺抜で秀麗な柳体の美の象徴。
垂直の挺抜さ、弯(曲がり)の流暢さ、そして鉤の鋭さ(または収筆の含蓄)。一気呵成に書き、構造の堅実さと弾力を両立させる。
垂直の挺抜さ、弯(曲がり)の流暢さ、そして鉤の鋭さ(または収筆の含蓄)。一気呵成に書き、構造の堅実さと弾力を両立させる。
鉤を作らず、丸く収める。挺抜な縦と円融な曲がりの組み合わせ。
横の安定と縦の勁挺。転折部(角)は方正かつ有力で、柳体楷書の骨力と方折の美を最もよく表す。
縦の勁挺と横の安定。転折部は方正に。
撇から折れて横へ。筆鋒の転換を流暢かつ有力に行い、柳体の険峻な気勢を出す。
横から折れて撇(はらい)へ。安定、方正、そして飄逸(ひょういつ)なはらいの組み合わせ。
撇から折れて点へ。勁挺な撇、方正な折、沈着な点の三段階のリズム。
垂直、方正な転折、平穏な横、果断な再転折、そして勁健な鉤。厳格な構造美を示す。
横、方折、そして流暢な湾曲(および鉤)。柳体の骨力と弧の美しさを融合させる。
横、方折、そして流暢な湾曲(および鉤)。柳体の骨力と弧の美しさを融合させる。
横、方折、微かな提按(筆の上げ下げ)を伴う再転折、そして舒展する撇。複雑なリズムと連貫する筆力を要求される。