~筆筋に宿る精神、柳体美学の神髄を愛でる~

魏炳恵先生の筆による柳体は、単に乾いて細いだけではなく、『神策軍碑』の神韻(しんいん)を深く得たものである。その起筆は方折(ほうせつ)で果断、あたかも刀や斧で刻んだかのようであり、収筆は含蓄(がんちく)に富み、力は紙の裏まで突き通る。横画の仰俯、縦画の挺抜(ていばつ)の一つひとつが厳格な法度に則っており、浮ついた気配が微塵もない。特に、長い「撇(へつ:左払い)」や大きな「捺(なつ:右払い)」の処理において、その線条は「万年枯藤(ばんねんことう)」のごとく老練な質感を持ちながら、躍動的なリズムを失わない。静的な楷書の中に内在的な躍動感を生み出すこの「度(ど)」の把握は、書家が長年にわたり楷書の法度に沈潜し、修練を積んできた証左といえよう。

墨香(ぼっこう)が静かに漂い、禅心が立ち現れる。書道芸術の悠久なる歴史において、『心経』の写経は、古来より書家が心性を磨き、知恵を伝えるための勝れたる道(修行)であった。胡興業先生によるこの柳骨(りゅうこつ)小楷『心経』は、単なる古典の再現に留まらず、風骨(ふうこつ)と空性(くうしょう)をめぐる芸術的参禅であり、方寸の間(わずかな紙面)に息を呑むような精神的張力を描き出している。

黒竜江省の書家・楊向剛先生によって創作されたこの柳体(りゅうたい)書法作品は、深い伝統の功力(こうりき)と、清雅な文人気質を余すところなく示している。柳公権(りゅう・こうけん)の書風は古来より「柳骨(りゅうこつ)」と称えられ、痩硬(そうこう)にして挺抜、遒勁(しゅうけい)なる骨力を特徴とする。本作はその精髄を正確に捉えつつ、儒・道・禅の意境を完璧に融合させ、静謐(せいひつ)ながらも力強い視覚的衝撃を与えている。